北陸・山陰
法師 (加賀・粟津温泉) ★★★
ギネスブックにも世界一古い旅館として登録されているそうである。なにしろ養老2年開業で以来
1300年というからすごい。玄関の構えも古風だが、和風のロビーは周りの調度にマッチしている。
ここでお抹茶をいただいてから部屋へ通される。中庭はよく整備されていて由緒あるらしい風情が感じられる。
古い旅館の例に漏れずここも継ぎ足して建物を増築していった後が見られる。中庭をぐるりと一周
できる形になっている。
玄関の裏手に当たる位置に露天風呂のある大浴場、ショーのためのホールなどがある。カラオケもあるようだ。
これと能舞台とがどう両立するのか不思議なところである。最近は、こういう由緒ある旅館がショーやカラオケ
に手を出すようになった。嘆かわしいことだ。ほかに生きる道はないのか?
部屋は取り立てて立派と言うことはない。正月に出かけたが、こたつの配線が接触不良で修理に手間取った。
予備を用意していないところは、サービス不十分と言わざるを得ないだろう。
食事は加賀料理ということになっているが、いまや京料理、京懐石などと明白に区別できる皿はない。
その意味では地方の特長を生かした一品がほしいと思う。まず高級料理の標準的なところというべきか。過不足
なしでは困るので、法師ならではと言うところがほしい。もう一度食べてみたいと思わせるような。冬なのにか
に料理はわずかだった。割高な旅館だなという気がした。一泊4万円(一人ですぞ!)

佳水郷(片山津温泉) ★★★
柴山潟似沿って建つ旅館佳水郷は、どの部屋らも湖が見渡せ、なかなか贅沢な景色を持つ。
コンクリートづくりの白い建物が湖側から見るとひときわ目立った存在となる。やや円形に湾曲している。
下の方に大浴場や変形プール・ジャグジーバスがある。大浴場からも湖が見渡せる。
温泉地なのでプールはもちろん温水。湖面に面した大きなガラス壁で明るく気持ちがよいが、オフシーズン
には売店・プールサイドバーや脱衣場のあたりは薄暗くなっていて、清潔感がないのは残念だ。
客室は、花の棟、舟の棟、水の棟に分かれている。水の棟の客室が最上級で庭園に
面しており、広く
ゆったりした雰囲気がある。4万円以上。残念なことに、すぐ前の庭を従業員が通っていったのには驚いた。
どうなっているのだろうか。これでせっかくの4★が3★になった。
料理は一応水準を行っている。旅館の出す料理の中では上の方ではないか。しかし食べにくるよりは遊び
に来るところだろう。
矢田屋(片山津温泉)★★★
柴山潟に面して梅光閣と松濤園の二つの建物からなり、間に別の旅館があって隣り合わせに
なっていないので、
地下通路でつながっている、という奇妙な旅館だ。松濤園の方は数寄屋作りの和風別館があり、庭園越しに湖を
眺められる。雪の季節はきれいである。したがって矢田屋と言ってもピンからキリまである大旅館だ。落ち着い
た雰囲気で泊まりたい人には松濤園の方を。窓からの柴山潟の眺望も大変良い。大旅館に
なるとどうしても食事が粗末になる。暖かいものは暖かいときにが無理になる。テーブルいっぱいに山海の珍味が
並べられたのを、目で楽しむのがお好みならば、それも一つの楽しみ方だが、私の好みではない。水準の食事は
供されるが、和風別館の名が泣いているのではないか。他に特徴はない。

加賀屋(和倉温泉)★★★★
全く豪勢な内装だ。メインの建物は20階ほどの高層の雪月花と渚亭だ。
雪月花はこれ程贅をつくしても 佳いのかと言わんばかりのごてごてで好きになれないが、全国の旅行添乗員
の投票では常にトップにある旅館とか。雪月花のトップには、浜離宮という名の付いた特別室があり、
ここへは特別のエレベーターカードが必要だ。。
部屋専属の仲居さんが付き、大きな舞台では連日何かが催されており、館内には商店街を彷彿させる錦小路
が店開く。鯉が泳ぐ堀をめぐらせ、さらには遊び専門の錦大路へとつづく。シアター、ディスコ、割烹などが
並ぶ。ロビーラウンジからの湖の眺望もよい。宿泊客はすべての楽しみを館内で
済ませることが出来るようにしつらえてある。これでもか、これでもかという趣向には辟易するが、楽しむ人
は多い。裏側の部屋からは湖の展望は絶望的だが、それだけ安い。といっても並の旅館よりはかなり高いが。
旅行社のつけるランクでは、常に上位に位置する旅館の一つである。リピーターも多いと聞くが、私の趣味に
は合わない。
一度で十分だ。まだ行きたいところが多いのに。
また泣かせるのは、朝の見送りに駅のホームまで部屋付きの仲居さんが付いてくることである。ちょっと
したおみやげを忍ばせて

西村屋本館(城崎)★★★★★/2
操業40年というから老舗中の老舗であろう。小雨降るしっとりとした湯の町城崎にふさわしい旅館だ。
部屋数は30室ほどであろうか、中庭をぐるりと囲んで建てられている。そのため直線状の廊下は鍵状に曲が
らざるを得ない。顔が指さないこういう造りは好きだが、廊下はもう少し広ぴほうがゆったりする。部屋の手
すりなどはよく掃除され磨かれていて、手落ちがない。和風旅館なのでトイレが狭いことを除けば設備は申し
ない。大浴場は多少大小があり、夜と朝では入れ替わり男女平等にいずれも味わえるのは時代の流れだろう。
温泉地であるにも関わらず、檜の浴枠はしっかり磨かれていてぬるっとしていないところはさすが。展示室には、
藤田嗣治の絵画や北大路魯山人の冬期などの美術品が飾られている。

かにのシーズンには普通の京懐石とともにかにづくしというコースが用意されていて、今回はこれに挑戦した。
値ははるが味は絶品といっておこう。とにかくうまく満足した。但馬の酒がこれほどおいしいとは寡聞にして知ら
なかった。一本土産にしたがやはりおいしかったので、かにのせいではない。ここまでくると5つ★は間違いない
と思えるのだが、減点がある。
まず、チェックイン時の案内は、これほどの老舗ならば着物姿でしてほしい。仲居さんに尋ねると、着物は仕事が
しにくいですからという。正月は着物姿だったというから残念だ。また、人件費の節約からか、ロビーには係りがい
ない。そのためロビーラウンジの灰皿からたばこの煙が立ちのぼっていてもそのまま。これはちょっとひどい。もう
1回ラウンジを訪れたが、そのときも灰皿は掃除されていなかった。
花紫(山中温泉)★★★★
加賀温泉郷の一つ山中温泉の名旅館の一つ。大聖寺川河畔しらさぎ橋のたもとに建つ6階建ての旅館、客室が川に
面している数少ない旅館だ。客室は30ほどしかなく、客室の整備や従業員の教育は行き届いている感じだ。大浴場と
露天風呂が別の階にあるのは不便だがやむを得ないか。ともになかなか清潔に手入れされている。大浴場風呂上がりに
供される表菓子風のゼリーは美味だ。アメニティグッズは、大浴場・客室ともにがんばっている。テレビが大画面なの
は気持ちがよい。この山の中で10チャネル以上も入るとは驚きだ。客室には坪庭がついている。いささかの高級感を
演出するには格好のものか。部屋からの眺めは良いはずだが、対岸の建物などどうしようもない。川面だけを見つめよう。

さて、料理の方は京懐石で、料理長は京都で修行したとか。加賀温泉郷のいくつかに宿泊した経験からは、抜群に
よいと感じた。冷えたものを出さないためか、コンロが2回持ち込まれるのは、いささかスマートさに欠ける。冬の
日本料理は難しい。中皿と酢物の2回土佐酢の皿が供されるのは変わっている。天ぷらを出さないとこうなるのか。
甘エビの天ぷらなど食してみたい気もするが。
聞くところによるとリピーターが多いという。たしかにもう一度来てもいいなという気にさせる旅館だ。宿泊費もそれなりだが。(一泊二食
付き40000円/人)
町では散策用のバスを30分ごとにサービスしてがんばっている感じだ。片道をバスで片道を土産物店を覗くか、
河川敷を縫うように走る鶴仙渓をぶらぶら歩きするか。冬の雪道はあまり歩きやすいものではないし、何しろ居並ぶ
旅館が川に裏側を見せているのにはげんなりする。いずれにしても見るべきものはない。温泉一筋と心得た方がよい
ようだ。
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